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スタッフコラム

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スタッフ全員で綴る連載コラム

Vol.23

2008年02月01日

中山 英明 <医院長>
周産期医療崩壊をどうするか。
 

周産期医療崩壊についてはマスコミでも多くが語られ、お産難民という言葉も広く知られるようになりました。長野県でも南信地方から周産期医療の崩壊が始まり、中信地方もかなり厳しい状況になってきました。

諏訪地域も今後近い将来帰省分娩の受け入れができなくなることが予想され、結果的に諏訪から飯田までの伊那谷では帰省分娩ができない状態になります。それどころか地域の分娩までもが受け入れできなくなり、いよいよ「お産難民」が生まれることになります。

1年前でしたら、諏訪地域の施設で吸収することができたのですが、2施設で分娩制限、中止となってしまったため不可能となりました。
何が引き金になってこの負のスパイラルが生まれ、加速されたのでしょうか。

第一に、診療所(開業医)の分娩中止が挙げられます。

年間の分娩取り扱い数が400~500件の施設が分娩を止めますと、周辺の施設に大きな影響を及ぼします。それが地域の総合病院ですと他科との兼ね合いもあり、ベッド数の確保が難しいことから分娩室を含めた増築が必要になります。
市民病院であれば行政がある程度迅速に対応することができるでしょうが、どうしても莫大な予算が必要になることから簡単には事が運ばないようです。診療所の医師の年齢を考えれば、後どの位で分娩を取り止める可能性があるのか予測できるはずなのに、後手に回った結果といえるでしょう。
年間110万件の分娩のうち47%が診療所で行われていることを御存知でしょうか。
集約化だけではなく新規開業が必要であることも声を大にして言いたい。
いずれにしても、短期的ビジョンだけではなく長期的ビジョンにたった予防策が地域ごとに求められることになります。

これだけではこんなに短期間で周産期医療は崩壊しなかったはずです。

そこに第二の理由が加わったことが大きかったと思います。

それは信州大学以外の大学から産婦人科医師を派遣されていた病院での医師引き上げです。
400~500件の分娩でも周辺に病院や診療所が数ヶ所あれば吸収できるでしょうが、診療所の分娩取り扱い中止が重なったり、集約化された近隣の病院のベッド数が確保できなければ当然厳しい状況が予想されます。最終的に今後総合病院の分娩制限が加速されることが予測され、「お産難民」を生むことになります。
信州大学以外の大学から産婦人科医師を派遣されている病院は、今後危機的な状況が訪れる可能性を常に考え、長期的ビジョンを持って地域の分娩を考えていかなければなりません。

最近話題になった上田市の長野病院の医師引き上げは、上田市産院の医師数減と重なり深刻な問題となりました。長野病院に関しては、分娩だけではなく婦人科手術ができなくなることも地域にとって大きな問題です。このことは上田市産院の閉鎖が問題になった3年前からある程度予測できたことです。

分娩のことだけがクローズアップされていますが、いくつかの問題が他にもあります。

婦人科手術は悪性腫瘍手術が優先されますので、子宮筋腫や卵巣嚢腫の手術が数ヶ月待たなければ受けられなくなることが予測されます。子宮外妊娠手術などの緊急手術を受け入れてもらえずに、分娩と同様に病院探しに苦労することになります。人工妊娠中絶手術は一般的には診療所で行われることが多いのですが、診療所の減少により施設探しに苦労することになります。

私の尊敬する経営コンサルタントに船井幸雄さんがいます。
船井さんはミクロ善人間ではなく、マクロ善人間を志すことが大切であると言っています。
ミクロ善人間とはわかりやすく言えば、限られた範囲内での善のみを追求する人のことです。
自分が所属する団体の中ではその行動が称賛されるかもしれませんが、少し広い範囲でみればむしろ善とは言えない行動をする人間のことです。
地元には貢献していても国レベルや国際レベルでの貢献などを考えない政治家などがよい例です。
産科医不足による周産期医療の崩壊に関する対策はある程度議論し尽くされたと思いますが、それは総論でしかありません。
今後求められるのは地域での各論です。
理想論だけでは解決できないのは明らかです。
短期的ビジョンと長期的ビジョンは車の両輪でありどちらも決しておろそかにできません。
診療所の責任はますます大きなものになるでしょう。

今こそ医療施設、行政、民意をまとめ、地域の産婦人科医療を冷静に正しい方向に導くことができる真のリーダーが求められます。
それは個々の施設のためだけではなく、地域全体のことを考えられるマクロ善人間でなくてはなりません。

最後になりましたが、診療所では医療スタッフの確保が大変難しい状況にあります。
特に助産師の確保は困難な状況です。
院内助産院の話題ばかりが一人歩きしているように思えてなりません。
ほとんどすべての診療所では助産師を募集しているはずです。
地域の妊婦さんのために力を貸してください。

最近は地域の分娩で手一杯になってしまい、帰省分娩を希望される妊婦さん、御家族の皆様に十分お答えできない状況になってきました。御理解のほどよろしくお願いいたします。

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